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物流DXとは?必要性や推進上の課題について解説!

2023年05月10日

物流基礎知識

近年、新型コロナウイルス感染症の影響から巣ごもり重要が増加し、ネットショッピングの利用者も急増しました。そのような動きの中、メーカーや卸、小売などの事業者はデジタル販路の開拓を推し進めています。
生活様式の変化とともに拡大している物販系分野のEC市場ですが、今後も市場規模は拡大すると予想されており、物流の重要性は以前にも増して高まっています。
一方、物流業界では深刻な労働力不足が顕在化し、社会問題として認識される状況となっています。生産年齢人口の減少が続く中、社会インフラとしての役割を持つ物流業界はDXによる構造改革が求められています。

この記事では物流業界の課題を取り上げ、物流DXの必要性について解説します。

そもそもDXとは

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、どのような概念なのか。DXは文脈によって意味合いが異なるため、ここでは最も一般的なDXの定義をご紹介します。経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」によれば、DXは以下のように定義されています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

引用元:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.10 – 経済産業省

端的に言えば、DXとはデジタル技術の活用を通じてビジネスや組織を変革し、競争上の優位性を確立することです。

デジタイゼーションとデジタライゼーション

また、DXと混同しがちな言葉として「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。DXを理解する上で重要なポイントなので、簡単にご紹介します。

「デジタイゼーション」とは、業務効率化やコスト削減を目的に、アナログなビジネスプロセスをデジタル化することです。例えば、紙で管理していた顧客情報をデジタル化しクラウドに移行することで、以前より情報共有や検索にかかる時間が短縮され、紙や印刷にかかる費用も不要になります。社内の連絡をチャットツールに変えたり、オフライン商談をオンライン化するなども同様です。

一方で、「デジタライゼーション」とは、デジタル技術を用いてビジネスプロセスを変革し、既存サービスと異なる新たな事業価値を創造することです。例えば、かつて書店を介して購読することが当たり前だった書籍が、サブスクリプションサービスとしてWEB上で購読できるようになったことで、ユーザーにとっては利便性が格段に向上しました。

このように、似て異なる意味合いを持つデジタイゼーションとデジタライゼーションですが、これらはDXを実現するためのステップといえます。DXの実現に向け、まずはアナログ情報のデジタル化を行い、業務を効率化する(=デジタイゼーション)。それを基盤として、新たなビジネスモデルを創造し、自社内だけでなく外部環境を含めたプロセス全体に新しい価値を提供する(=デジタライゼーション)。

DXは、以上のステップを実現した先に位置付けられる考え方だと捉えてよいでしょう。

物流DXとは

では、物流におけるDXとはどのようなものでしょうか。国土交通省では、物流DXを以下のように定義しています。

“機械化・デジタル化を通じ、物流のこれまでのあり方を変革すること”

引用元:最近の物流政策について – 国土交通省

具体的には、サプライチェーン全体での機械化・デジタル化により、既存の業務プロセスにおける情報を見える化、作業を単純化・定常化することで、物流従事者の働き方を改革する。また、物流システムの規格化を通じ、物流産業のビジネスモデルを革新していくものとしています。

物流DXとは

また、同資料では「労働者不足の深刻化」や「新しい生活様式に対応した、非接触・非対面型物流への転換」といった背景のもと、物流DX推進により目指すべき方向性について以下のように示しています。

“物流の機械化・デジタル化を通じた、既存のオペレーション改善や働き方の改革の実現により、経験やスキルの有無だけには頼らない、ムリ・ムラ・ムダがなく円滑に流れる「簡素で滑らかな物流」の実現が必要”

引用元:最近の物流政策について – 国土交通省

つまり、物流DXとは労働生産性の向上と労働力の確保を目的に、機械化・デジタル化を通じてサプライチェーン全体の最適化を目指した取り組みだと言えます。
当然ながら物流は生産者から消費者にモノが渡る過程であらゆる事業者が関与し成り立っているため、個社ごとに省人化・効率化を進めても、業界全体が取り組むべき課題が解決されるわけではありません。そのため、物流DXを推進するためには、物流に関わる全ての事業者がサプライチェーン全体を通じて、一致協力する必要があります。

物流DXの必要性

上述したように、物流業界では労働力不足や積載効率の低迷などをはじめ多くの問題が顕在化し、社会問題として広く認識されている状況です。

こうした状況の大きな要因は、物流需要と供給能力のバランスが崩れている点にあります。
需要面では、消費者ニーズの多様化を背景に納品の多頻度化・小口化が進み、小さな荷物をより回数を増やして配送するようになりました。また、物販系分野のEC市場が拡大するにつれ、宅配貨物も年々増加傾向にあり件数ベースで物流量は増加し続けています。さらに、近年の新型コロナウイルス感染症の流行によって、このような動きに拍車がかかりました。

一方、供給面では少子高齢化や人口減少による慢性的な労働力不足に加え、業界全体でドライバーの高齢化が進行しています。また、2024年度には時間外労働の上限規制が適用され、一人当たりの労働時間は制限されてしまいます。このうえ、先述した納品の多頻度化・小口化に対応していることで、トラック一台当たりの積載効率は低下の一途を辿っています。

このように、増加する物流需要に対して供給能力は減少しており、今後もその差は開き続けるとされています。このギャップによってもたらされるさまざまな問題は、私たちの生活や経済活動を支える物流インフラとしての役割を脅かす問題になりかねません。特に労働力不足は「生活に必要な物資を運べない」といった深刻な事態をもたらす可能性があるため、早期に解決する必要があります。

物流業界はこのような現状を改善するため、「労働生産性の向上」と「労働力の確保」という大きな課題を解決しなければなりません。そこで、これまでの物流のあり方を変革する取り組みとして期待される、物流DXの必要性が高まっているのです。

物流DXを進める上での課題

ここからは、物流DXを進める上での課題を二つ取り上げます。

物流の標準化

物流の標準化とは、物流を構成する要素を統一することです。
これまで物流現場では事業者や拠点ごとに個別最適化して円滑な物流を行っていましたが、ソフト・ハードを含む各種要素の規格を事業者間を跨いで標準化することで、あらゆる業務の効率化が期待できます。

例えばソフト面では、事業者ごとに個別最適化されている伝票データを標準化することで、検品や事務作業の効率化が実現します。ハード面では、パレットサイズの標準化により、自動ロボット導入による省人化が促進され、荷役作業の効率化や積載効率の向上などが可能になります。

物流DX推進のため、ひいては生産性向上のために必要不可欠な標準化ですが、なかなか進んでいないのが現状です。必ずしも企業の利益創出につながるとは限らず、時間や設備投資などのコスト負担も生じるため、全体の合意形成が難しいのです。また、パレットひとつとっても種類が多く、素材やサイズも異なります。「荷主の要望に全て応えるべきだ」といったサービス精神の高い日本の商習慣が標準化が進まない要因になっています。

標準化を進めるには、サプライチェーン上の各事業者が各種要素の非統一で生じる現場の課題を認識し、解決のために手を取り合って連携していくことが重要です。

DXの必要性に関する理解

物流現場ではDXの必要性について理解が進んでいない現状があります。実業務を行う現場の従業員が必要性を理解していなければ、協力を得られず機械化・自動化推進の妨げになります。

理解が進まないのは、デジタル技術に頼らずとも荷主のニーズに対応できていることが影響しています。現場では長い歴史の中、アナログな対応で業務改善してきました。特に実務部分は、ドライバーや現場従業員が個々の裁量で改善を繰り返し行い、荷主のニーズに対応してきました。そのため、極端に言えば機械化・デジタル化を進めなくても、輸送や保管、荷役などの業務が成立してしまいます。

しかし、ドライバーが高齢化するにつれ属人化したスキルやノウハウが失われつつある中、個々の知見を形式化・デジタル化することは、今後業務上の問題解決に有益な情報となる可能性があります。機械化・デジタル化の推進は、作業プロセスを汎用化し、労働力の確保、ひいては荷主ニーズへの対応につながります。こうした環境変化に現場を含めて素早く変革し続ける企業を目指していくことが大切です。

まとめ

さまざまな問題を抱える物流業界では、早期に労働生産性の向上や労働力の確保が求められています。こうした状況下でとりわけ必要性が高まっているのが物流DXです。

物流DXは、機械化・デジタル化を通じて現場のオペレーションや働き方までを変革する取り組みとして期待されており、推進のためにはサプライチェーンに関わる全ての事業者が連携し取り組んでいくことが不可欠です。しかし、多くの事業者が一斉に同じ方向を向いて協力することは簡単ではありません。まずは、個社ごとに物流DXの必要性について理解を浸透させるなど、連携のための土台作りを行うとよいでしょう。

記事の作成者

ロジクエスト編集部

株式会社ロジクエストにて、国内外の輸送案件に従事する専門家メンバーが作成。
物流に関わる基礎知識やトレンドについて、分かりやすく解説しています。

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