2024年問題とは?物流・運送業界への影響と対策をわかりやすく解説
2024年10月17日
ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで生じるさまざまな問題を総称して、「2024年問題」といいます。この問題の本質は、労働時間の厳格な管理と、その結果として生じる人手不足や配送コストの増加です。これにより、企業は業務の効率化や新たな雇用戦略を求められることになります。このコラムでは、2024年問題の概要から、それが物流業界や荷主企業に与える影響、さらには効果的な対策までをわかりやすく解説します。
この記事の目次
2024年問題とは?
2024年問題とは、働き方改革法案により、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで生じる問題の総称のことで、具体的には「物流・運送業界の売上減少」「荷主の運賃上昇による商品への価格転嫁」「ドライバーの収入減少」「ドライバーの離職および不足」
などの問題を指します。ドライバーの労働時間に上限が設けられることで、ドライバー1人あたりの配送量が減少し、物流・運送業界の売上減少、また、それに伴ったドライバーの収入減少および離職者の増加が考えられ、物流・運送業界では、これまでのような配送運営が難しくなるため、これらの問題への対策がとても重要です。
2024年問題と働き方改革関連法
2024年から適用された「働き方改革関連法」により、ドライバーの労働時間や休息時間に関する規制が強化されました。ここではその内容について詳しく紹介していきます。
1. 時間外労働の上限が年960時間になる
2024年4月から、自動車運転業務における時間外労働の上限が年960時間に設定されました。これにより、これまでの長時間労働による対応ではなく、業務の効率化が必要不可欠となります。
2024年3月31日まで | 2024年4月1日以降 |
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適用なし | ・特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間 ・時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されない ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されない |
2. 時間外労働が月60時間を超える場合の割増賃金率が50%になる
月60時間を超える時間外労働については、2023年4月以降は割増賃金率が50%に引き上げられています。さらに22時から翌5時(条例によっては23時から翌6時)までの深夜時間帯に時間外労働をさせる場合は、深夜割増賃金として25%が加算されます。60時間を超える時間外労働かつ深夜労働なら、割増賃金率は75%です。
これにより、長時間労働が企業にとって一層のコスト負担となるため、企業は、配送効率の改善や、時間内での業務完了を目指す必要があります。
出典:厚生労働省
3. 拘束時間や休息時間の基準改正
ドライバーの健康管理を強化するため、拘束時間や休息時間の基準も改正されています。これにより、長時間労働の抑制が進み、ドライバーの労働環境の改善が期待されますが、企業側には配送計画の再調整が求められます。
期間 | 2024年3月31日まで | 2024年4月1日以降 |
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1日の拘束時間 | 13時間以内 ※最大16時間/15時間超は週2回まで目安 | 13時間以内 ※最大15時間/14時間超は週2回まで目安 ※宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は、16時間まで延長可 (週2回まで) |
1ヶ月の拘束時間 | 原則293時間 ※労使協定の締結で、1年のうち6ヶ月までは年間3,516時間を超えない範囲内で1ヶ月320時間までに延長が可能 | 原則284時間以内 ※労使協定の締結で、1年のうち6ヶ月までは1ヶ月310時間までに延長が可能 |
1年の拘束時間 | 原則3,516時間 | 原則3,300時間以内 ※労使協定の締結で、年間3,400時間までに延長が可能 |
2024年問題による物流・運送業者への影響
2024年問題により、物流業者は次のような影響を受けることが考えられます。
・ドライバー不足の深刻化
時間外労働の上限規制により、1人あたりの労働時間が短縮されるため、従来よりも多くのドライバー が必要となります。しかし、ドライバーの採用がうまく進まない場合、人手不足がさらに深刻化する可能性があります。
・人件費増加による売上、利益の減少
時間外労働の割増賃金率の引き上げにより、人件費が増加します。また、運行スケジュールの見直しや効率化への投資も必要となり、運送コスト全体が増加し、売上や利益が圧迫され、経営に影響を及ぼすリスクが高まります。
2024年問題による荷主企業への影響
荷主企業も2024年問題の影響を避けることはできません。以下は、物流業者の状況が荷主企業に及ぼす主な影響です。
・配送遅延のリスク増加
労働時間の制限により、ドライバー不足が起こると、物流業者が配送スケジュールを調整せざるを得なくなり、結果的に荷主企業に対して配送の遅延が発生するリスクが高まります。
・配送コストの増加
労働時間の制限や人件費の増加に伴い、物流業者は料金の引き上げを求める可能性があります。荷主企業は、その分のコスト負担を検討する必要が出てきます。
・協力体制の見直し
配送の効率化や安定した供給体制を維持するためには、荷主企業と物流業者の間での密な連携が求められます。協力関係の見直しや、新たな配送契約の締結が必要になることもあります。
2024年問題への対策
2024年問題に対応するためには、物流・運送業者として以下のような対策を講じることが重要です。
1.配送ルートの最適化
AIやデジタルツールを活用して、配送ルートを効率化することが一つの有効な対策です。これにより、ドライバーの稼働時間を短縮し、より多くの荷物を短時間で配送できるようになります。
2.外部委託の活用
ドライバー不足が深刻化する中で、自社だけで対応するのが難しい場合は、外部の配送業者に委託することで負担を分散する方法もあります。特に、軽貨物ドライバーのアウトソーシングは柔軟な対応が可能で、即効性のある手段として注目されています。
3.ドライバー待遇の向上
ドライバーの労働条件を見直し、より魅力的な職場環境を提供することで、採用力を強化することも重要です。インセンティブ制度や柔軟な働き方を取り入れることで、労働時間に制限があっても働きやすい環境を作り、ドライバーの定着率を高めることが可能です。
おすすめの配送業務委託先
前項で、2024年問題への対策として「外部委託の活用」についてご紹介しましたが、実際にどこへ依頼すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
ここではおすすめの配送業務委託先をご案内します。
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まとめ
2024年問題は、物流・運送業界にとって避けられない課題です。労働時間の制限や割増賃金率の引き上げ、拘束時間の基準改正により、業務運営に大きな影響を及ぼします。物流業者や荷主企業は、効果的な対策を講じ、業務効率化や人材確保に努めることで、この変革を乗り越えることが求められます。適切な対応を行うことで、ドライバーの働きやすい環境の実現と、物流の安定化を図ることができるでしょう。
ロジクエスト編集部
株式会社ロジクエストにて、国内外の輸送案件に従事する専門家メンバーが作成。
物流に関わる基礎知識やトレンドについて、分かりやすく解説しています。